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小洒落た例や演習問題を並べました。
I've arranged some playful examples and standard textbook problems.

リスト:

 

具体例1

 

● 分岐指数e, 剰余指数fの拡大の例は?

​● 射影化の効用

● スーパーシンギュラーな楕円曲線

● 玉河数の有限性

● 62.5%より多くの元の組みが可換なら、アーベル群と断定して良い!?

● 無限次元ガロア理論

具体例2

 ● Perfecto​id体の合併の完備化はPerfectoidか?

● Perfectじゃない環のWitt環はDVRになれない

● F_2上の交代行列と2-Selmer群

● 表現のSelmer群と古典的なSelmer群

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​クイズ:分岐指数e, 剰余指数fの拡大の例は?

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↑与えられた自然数e,fに対して、eを分岐指数、fを剰余指数に持つ局所体の拡大はあって、例えば上のL_e,fがそう。Qp(μ_p^{n-1})は不分岐拡大の例(ヘンゼル体の不分岐拡大は剰余体の分離拡大との間に全単射がある。)で、それとp-Eisenstein多項式の根で生成される完全分岐拡大の合成で所望の体が得られる。実際、pはQp(μ_p^{n-1})も素元なので、x^p-pはp-Eisenstein多項式である。なお、不分岐拡大は自動的にガロアだが、上のL_e,fはQ上ガロアとは限らない。

F_2上のと楕円の2-Selmer

​射影化の効用

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単位円Fp有理点の個数を求める問題。問題自体はとても初等整数論的で、実際別解は色々あるけれど、アフィン代数多様体だと思って、射影化して余分に出てくる無限遠点を引くというのがわかりやすい。pを4で割ったあまりで答えが場合分けされるのは、2乗して−1になる数があるかどうかによって、無限遠点が2つになるか、1つもないかが分かれる。

​ちなみに、射影化した後の有理点の位数を求める時は、種数gの代数曲線Cについて成り立つ|#C(Fq)-(q+1)|≦2g√q でg=0としても求まる。

​スーパーシンギュラーな楕円曲線

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上の続きでg=1の場合。院試の口頭試問で聞かれた問題。楕円曲線のハッセの不等式の左辺が0になる楕円曲線としては、上のようにsupersingularな楕円曲線が例として上がる。逆に、左辺が0ならsupersingularな楕円曲線であることは、φ^が非分離であることからわかる。

 

pが2や3のときはsupersingularでもE/F3:y^2=x^3-x−1みたいに、E(F3)={0}となってsupersingularだが#E(F3)=4とはならないケースもある。

玉河数の有限性

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玉河数の有限性という命題がある。Kを離散付値体とする。E_0(K)は楕円曲線の点で還元した時に非特異点に移るもの全体のなすE(K)の部分群であるが、これは指数有限の部分群であるという命題である。楕円曲線へのn等分点やTate加群への惰性群の作用で楕円曲線の還元の様子がわかるというNeron off shafarevichの判定法というものがあるが、それの証明に用いられる。

また、E(Qp)は無限群だがE(Qp)/mE(Qp)(weak mordel weilの定理の証明に出てくる群)は有限集合であることが、玉河数の有限性からすぐわかる。

 

初等的に理解できる命題であるが、証明にはネロンモデルが用いられる。

Neron modelの定義からε(R)からE(K)への自然な単射が定義でき、これが全単射であることはNeron mapping property(略してNMPから従う).

なお、単射性についてはε(R)からr,s:SpecR→εをとって、自然な射SpecK→SpecRとの合成が生成点上スキームの射として一致することからもすぐわかる。分離性の付値判定法からわかると言っても良い。

有限群であることを示したい群E(K)/E0(K)は、εのspecial fiber ε~をそのidentity componentで割った群と同型であることが、Tate algorithmを用いることで示される。その商群が有限群であることは、代数群に対しそのidentity componentは指数有限であるという事実から従う。

 

参考文献 J.H.Silverman Advanced topis of the arithmetic of elliptic curves

​62.5%より多くの元の組が可換なら、アーベル群と断定して良い!?

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1組でも非可換な元の組があれば非可換群というわけだが、逆に、いくつ非可換な組み があれば、群は可換と断定できるのか?を問う問題である。上の不等式を示す問題が、スタンフォード大学大学院で出題されたことがある。S3で実験すると1/2、D4やQ8で実験すると5/8になる。5/8より多くの元の組みが非可換なら、アーベル群と断定しても良いということになり、なんだか不思議な感じがする。https://arxiv.org/pdf/1205.4757.pdfが面白そうなので今度時間が空いたら読んでみたい。
 

​無限次元ガロア理論

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ガロア群にはクルル位相と呼ばれる、上の画像のU_σをσの基本近傍系とする位相が入る。つまり、「U⊆Gal(L/K)が開集合かどうか知りたければ、σ∈Uを任意にとって、σ∈U_σ⊆UなるU_σが取れることを言えばいい」ということを言っている。これによって、開集合が全て与えられる。
 クルル位相の定義で重要なのはK上Mが有限次拡大、という部分である(ガロアの条件は、ガロアに絞っておいたほうがMを取った時にGal(M/K)とかけるなど何かと便利だから)。MがLまで走れる時(有限次のとき)は離散位相になり、Lまで走れないとき(無限次元のとき)はp進位相やZ^の位相が出て来るという訳である。
 ガロア群の2つの元f,gが''近い''ことをあるK上有限な中間体Mに対しf|M=g|Mとなること定めている。このことが認識されれば、離散位相になるのと有限次が同値なのも、さらにクルル位相の定義で有限からガロアが出てくるのも自然である。

  ガロア拡大Q(√2,√3)/Qとそのガロア群{1,σ,τ,στ}(σ:√2→-√2,τ:√3→-√3)クラインの四元群)を例にとると、U_1=U_σ=U_τ=U_στ={1,σ,τ,στ}であり、基本近傍系のUnionは基底になるので、離散位相である。無限次元の場合は1点集合が開集合になれず、孤立点を持たない位相空間となる。

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